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掌の官能小説
第19章 今日もあなたを待っています
「じゃあまたね。」

「はい。また…ね。」

僕はここで彼女と別れた。

1年ちょっと前に彼女と別れたまま。

「またね。」って言ったのに…


彼女と出会ったのは、駅前のベンチ前で雨が降っていた。
小さな軒下で雨宿りをしていると彼女が僕に傘を差し出してくれたのだ。

「あの、宜しければ一緒に…」

「え?で…でも…」

「たまに帰り時間が一緒になっていて…その…私が帰る道の途中にあなたの…あ、すみません。ストーカーではありませんよ。ただよく同じ時間に同じ方向に歩いているので…私、少し安心して歩いて帰れていたので…」

「あ…そう…でしたか…」
いつも僕はスマホを見ながら歩いていたから、周りの人なんて気にしていなかったなと思った。

寒いし、雨は止みそうもないし、大きな傘ではないから濡れてしまうだろうけど、彼女が好みのタイプで、夜道に自分を頼りにしてくれていた事にも少し嬉しかった。

「止みそうも無いし…ありがたく入れさせて貰います。」

僕は差し出された傘に入ると、彼女と僕の身長差があり、彼女は傘を持った腕を上げ大変そうだった。

「あ、僕が持ちます。」
僕は彼女から傘を受け取った。

赤い傘で相合傘…それもタイプの女の子
彼女がいない僕はドキドキとしていた。
何を話していいのか分からずに、僕は無言で歩いていた。

「急な雨でしたね。」

「そうですね。」

「明日も雨かしら。」

「どうだろう…」

僕はそっけない受け答えをしてしまっていた。
彼女はそこから黙ってしまった。

雨は思いの外強くなり、彼女の肩がだいぶ濡れていた。
僕は申し訳無いと思いながら、彼女が濡れないように傘を傾けた。

道路は水溜りが出来、車はビシャビシャと水しぶきを飛ばし走り去っていた。

彼女の悲鳴と共にスピードを出した車が思い切り水溜りの水を彼女を目掛けて飛ばし走り去っていた。

車道側を僕が歩くべきだった…

「あ、だ…大丈夫?」

「あはは。もう、嫌ぁねっ。濡れちゃったわ。」
そう言いながら彼女はハンカチを取り出し腕を拭いていた。

いやいや、腕より顔が濡れてるし…と僕は思いながら

「ハンカチじゃダメね。ふふふ。寒っ!」
彼女はブルッと震えながらハンカチをバッグにしまった。



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