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掌の官能小説
第28章 僕の彼女はモデル
雪歩は女優になり、世界に羽ばたいてしまった。
僕の事は忘れてしまったのだろう。

雪歩人形を暫く抱いていたが、そのうち邪魔になりベランダで雨ざらし。

雪歩が居なくなって三年過ぎた頃、僕には彼女が出来た。
穏やかな毎日だった。
ある日僕の目の前に雪歩が現れた。
僕の隣には彼女がいた。
一瞬目が合った…と思った。
雪歩はチラッと彼女を見ると、僕に話しかけもせずそのまま立ち去った。

「あれ、ユキホじゃない?綺麗ね。テレビで見るより細いわね。でも彼女は最初はAV女優だったんでしょ?」
彼女が意地悪く言ったように感じた。

僕は彼女と繋いでいた手を解いて、雪歩を追った。
が、既に人混みに紛れてしまい彼女の姿は見えなかった。


僕は部屋に戻ると雪歩の人形をベランダから部屋に入れ、綺麗にした。
綺麗にはならない。
それでも僕は雪歩をベッドに置いた。

翌日ベッドの上の雪歩人形に「ただいま」と言おうとすると、無表情の人形の目から涙が流れていた。
人形の涙を拭き、雪歩の事を思いながらテレビをつけた。
テレビからは雪歩の死亡が伝えられていた。
死因は伝えられなかったが、ネットでは自死を伝えていた。

僕は信じられなかった。
昨日、雪歩を探すべきだった。
雪歩は僕に最後の賭けをしていたのかも知れない。

昨日より、もっとずっと前に雪歩を掴まえていたら良かったのに。

僕は雪歩の人形を抱き締め動くことも出来なくなっていた。

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