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第1章 始まった2人
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「ああ」
小さく、けれどハッキリと、わたしは呟いた。
隣で寝ている男の、背中。
和俊のものではない…それは起き抜けのアタマでも。すぐにわかった。
裸の、背中。
わたしも、服を着ていない。
慌てて、起こしていた上半身を布団でくるむ。
昨日、何があったのかを思い出す。
確かに、けっこう飲んだ。飲んだけれど、記憶がなくなるほどではなかった。
前田課長とやっちゃったんだった。
アタマが、だんだんと思考を開始した。
前田課長と。
しかも、わたしが誘ったんだ。
そして、とても気持ちのいいセックスだった。
そろりそろりと布団を出て、ベッドの下に落ちている下着を身につける。
バスタオルを巻いて、カバンを探す。
ここがどこかはすぐわかる。ラブホテルだということくらいは。
無造作に置かれているバッグの中からスマホを取り出して、今一度時間を確認すると3時28分。
LINEが何件かと、和俊からの着信が2件あった。
ベッドに腰をおろす。
「しまった」
と口には出さなかったけど、亜沙子は大きくため息をついた。
背中から「んー、今、何時?」と声がする。
「3時半になるところです。課長、帰らないとやばくないですか?」
自分でも落ち着いた返事に驚いた。
顔を見たくない。振り返らない。
動揺している顔を見られるのも嫌だ。
振り返らずにいると、ふわっと、前田課長の腕が首に巻きついてきた。
「なんでそんなこと言うの?」
耳元での囁きに、どきっとする。
会社で聞き慣れている、前田課長の声。
「怒られますよ、奥さんに。ほら、ここんところ、帰りが遅かったんでしょう?やっと、週末なのに…」
胸のドキドキを悟られないように、落ち着いた声を出すのに必死なのに、なのに。
ちゅ
と耳元にキスを落とされる。
同時に、胸のドキドキがまた一段階上がる。
「水本の口から、そんな心配聞きたくないな」
甘えたような口調。
もちろん、いつもの前田課長のキリッとした姿からは想像がつかない。
少なくとも今、わたしだけに向けられる甘い声。
流されてもいいか。
亜沙子はあっさり降伏した。
小さく、けれどハッキリと、わたしは呟いた。
隣で寝ている男の、背中。
和俊のものではない…それは起き抜けのアタマでも。すぐにわかった。
裸の、背中。
わたしも、服を着ていない。
慌てて、起こしていた上半身を布団でくるむ。
昨日、何があったのかを思い出す。
確かに、けっこう飲んだ。飲んだけれど、記憶がなくなるほどではなかった。
前田課長とやっちゃったんだった。
アタマが、だんだんと思考を開始した。
前田課長と。
しかも、わたしが誘ったんだ。
そして、とても気持ちのいいセックスだった。
そろりそろりと布団を出て、ベッドの下に落ちている下着を身につける。
バスタオルを巻いて、カバンを探す。
ここがどこかはすぐわかる。ラブホテルだということくらいは。
無造作に置かれているバッグの中からスマホを取り出して、今一度時間を確認すると3時28分。
LINEが何件かと、和俊からの着信が2件あった。
ベッドに腰をおろす。
「しまった」
と口には出さなかったけど、亜沙子は大きくため息をついた。
背中から「んー、今、何時?」と声がする。
「3時半になるところです。課長、帰らないとやばくないですか?」
自分でも落ち着いた返事に驚いた。
顔を見たくない。振り返らない。
動揺している顔を見られるのも嫌だ。
振り返らずにいると、ふわっと、前田課長の腕が首に巻きついてきた。
「なんでそんなこと言うの?」
耳元での囁きに、どきっとする。
会社で聞き慣れている、前田課長の声。
「怒られますよ、奥さんに。ほら、ここんところ、帰りが遅かったんでしょう?やっと、週末なのに…」
胸のドキドキを悟られないように、落ち着いた声を出すのに必死なのに、なのに。
ちゅ
と耳元にキスを落とされる。
同時に、胸のドキドキがまた一段階上がる。
「水本の口から、そんな心配聞きたくないな」
甘えたような口調。
もちろん、いつもの前田課長のキリッとした姿からは想像がつかない。
少なくとも今、わたしだけに向けられる甘い声。
流されてもいいか。
亜沙子はあっさり降伏した。
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