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第2章 亜沙子の罪
ごく普通の、課の飲み会だった。

前田祐介は営業一課長。
そして、水本亜沙子は営業ニ課の女子社員で、入社3年目だという。

俺は、今年度からここの課に配属になり、転勤してきた。
一課と二課は、ビルの同じフロアにあり、特に仕切りもない。
仕事中の行き来もある。


偶然、同じ日に一課も二課も飲み会を計画しており、それなら一緒にやればいいじゃないかと一課が提案をして合同での飲み会になった。


水本とは、これまでにも何度か飲み会で一緒になったことがある。
けれど、同期や年次の近い者同士で話すことが多く、そこまで親しく話したことはなかった。

ただ、異動してくる前、出張でここのビルに来た時にエレベーターで一緒になったことをハッキリ覚えている。
今以上に初々しく、笑顔がかわいいなと思った。
色気があるタイプではなく、どちらかというとホンワカとした、「妹」っぽいタイプの女の子だ。

その日も、薄いピンクのニットにグレーの膝丈プリーツスカートという、あまりOLっぽくない格好をしていた。
エレベーターのボタンを操作する右手の薬指に、シルバーの指輪がはめられている。

転勤してきて、最初に水本を見たとき、服装まで覚えていた自分に心の中で苦笑いをした。


今夜の飲み会で隣に座ったのは、偶然だ。
なんとなくイメージで、酒はあまり強くないんだろうと思っていたら、意外に飲む。
そのギャップがまた、かわいいと思った。

そして、右手の薬指に指輪をつけているのを見る。
男からもらったものだろうか。
去年、エレベーターで一緒になったときにしていたものと同じだろうか?
さすがに、そこまでは覚えていない。


「水本ってさ、◯◯女子大だっけ?」
「そうなんです。知り合いとかいます?」
「うーん、いないこともないけど、年が違いすぎるな」
「えーと、前田課長はおいくつですっけ?」

遠慮がちに年齢を尋ねられる。

「37」
「じゃ、わたしの13コ上ですね」
「一回り以上違うのかー」

そりゃ、かわいいって思うよな。
目の前にあったビールを飲む。

「その指輪」
「はい?」
「指輪」

水本はサラダを食べる箸の手を止め、「これですか?」と聞いてきた。

「そう。それ、彼氏から?」
「そうですね、一応」
「…一応ね」

軽くがっかりする自分に、また、苦笑い。


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