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第14章 朧夜の春

「俺を惑わさないで」
秀王は火照る泉夏の頬に指先で触れた。
「こんな可愛い顔で。あんなに可愛い事を言って。俺をこれ以上誘惑してこないで」
－次はどうなるか分からない。
その言葉は辛うじて呑み込み。
秀王は再び泉夏の唇を吸った。
その口付けの直前。
またしても悩ましい吐息混じりの短い声を上げられ、身勝手極まりない腹立たしさを覚えてしまう。
こんなにも愛しいひとに、そんな感情を抱（いだ）くだなんて。
そんな自分が自分で一番信じられないけれど。
でも。
だって。
このもう一回をしたら、終わりにしよう－確かにそう思っていた。