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第14章 朧夜の春

幾度も唇を貪る中。
次第に思考は麻痺し、感情と行動の制御が難しくなってゆく。
こんなにも貪欲に求められても、彼女は少しも嫌がる素振りは見せなかった。
それどころか口内に侵入したものを受け入れ、応えるように自らの舌先を絡めてくる。
優しくしたいと思う心とは裏腹に、回数を重ねるごとに増す激しさ。
痛みを与えるような事は決してしてないけれど。
息苦しさはきっと、感じさせてしまってる。
だって、自分だって相当に苦しい。
呼吸を忘れるほどに彼女が欲しかった。
相手をしてる彼女だって、ちょっと待って欲しいと思うくらいには－満足に息を吸えてないはずだった。
それなのに、熱く切ない吐息を時折零しながらも、自らの為すがままになっている。
もうそろそろ許して欲しい－たった一言でもあったなら。
僅かでも両手で身体を押し退けてくれれば。
それが自分を御する力になったのに。
その一切をしないで、大人しく口付けられている彼女。
自らの欲望は尽きるどころか、果てなく溢れてゆく。