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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
何かが微かに動いた気配がして目が覚めた。
半分夢うつつで辺りの様子を窺うと-ベッドサイドの小さな灯りのみの部屋は、まだ暗かった。
起床の時間には早そう-もう一眠り出来そうで、安心する。
自分を包み込む温かなものが、とてつもなく心地良い。
無意識のまま擦り寄れば、優しく引き寄せられる。
守られている事への安堵感に、両目を完全に閉じかけ-そこで眠気が飛ぶ。
自分の部屋でも、ましてや慣れた自分のベッドの中ではない。
第一、自分を抱き締めていてくれるこの腕は。
自分が寄り添っているこの身体は-。
胸を高鳴らせながら、泉夏は顔をそっと上げた。
果たしてそこには、彼の顔があった。
「…先生」
掠れた小声で呼べば、灯りに照らされた秀王が微笑んだ。
温かで、安心出来たのは、彼の腕の中だったから。
その胸に自分は頬を寄せ、再び眠りに落ちようとしていたのだった。
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