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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
何も思ってないのに、泣いたりなんかしない。
流した涙が如実にそれを物語っている。
自分は恐らく-許されている。
それどころか、逆に気遣われていて-もう情けないどころじゃなかった。
「なんでもないの。先生は酷い事なんかしていない。そもそも先生を、嫌とか怖いなんて思うはずがない」
返す言葉もなく深い溜め息を吐くしかなかった秀王に、泉夏は訴える。 
「この涙は…違うの。ほんとに違うの。コンタクトがずれちゃって」
-誤解させてごめんなさい。
言ってる傍から、泉夏の目に再び涙が溢れる。
こんな姿を間近で見せられたら-例えどんなに『違う』と言ってくれたとしても。
「…最低だ」
自分を抱き締める彼の小さな自嘲に、泉夏は声を強めた。
「だから。先生は関係ないのっ」
少し前の行為には、不快感を示す素振りもなかったのに。
いきなりの泉夏の豹変に、秀王は素直に驚いてしまう。
開いた口が塞がらないでいれば、泉夏が突如ベッドから起き上がった。
驚きを増しながらも、秀王もまた彼女に倣って身体を起こした。
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