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第14章 朧夜の春

彼女は何故いきなりこんな事を？－疑問が湧いてくる。
けれど、瞬きもせずに見つめられ－さっきとは別の意味で動揺し出す自分がいた。
『もしも』－ただの仮定された話。
なのにあまりにも浅ましい自分の心は、容易に『もしもの時』を想像する。
身体が熱を持ち始め－愚かな自分をどうにか宥めていると、彼女が畳みかけるように迫ってくる。
「冗談だった？それとも－」
－本気だった？
真実を求められ、秀王は黙っている事が次第に困難となってゆく。
「想いが通じ合った初めての日だからとか。きちんと順番を踏まえてからじゃないとって思う気持ちは…『もしもの時』は関係なくなったりする？」
－それとも、絶対に有り得ない？
泉夏の祈るような眼差しに、秀王は言わずにいられなかった。
「…難しい質問だ」
散々偉そうな事を並び立ててきたくせに、弱気な台詞が口をつく。