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一族の恥
第1章 お母さんへ
 最初、アンナは腰抜かしとった。



 そらそうやでな、買いもんから帰ったら床の上におかんとおばあ倒れとって、揃いも揃って胸から血ぃ流してんねんから。
 耄碌ババアに至っては、胸に包丁ブッ刺さったまんまやねんから、そら、そうなるわな。



 アンナはがくがく面白いくらい震えとってな。
 声もでんみたいやったわ。



 ぼくな。
 最初はアンナに「はよ逃げや」ゆうて、椅子に座って、煙草吸ったんや。


 
 でも、アンナは動かれへんかったんか、ずっとぼくを見てたわ。
 ずっと「パパ、パパ」ゆうて慕ってくれてたのにな。



 あんときは、なんかやばいもんでもみるような目しとった。


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