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一族の恥
第1章 お母さんへ
 人殺しのぼくがこんなん願うのは、おかしいかもしれん。



 けど、康生にだけは、里奈子にだけは、幸せになって欲しいんや。
 近い将来、じきに2人のあいだに生まれてくる命にだけは、どうしても、絶対に、幸せになって欲しい。


 そのために、この手紙読み終わったら、さっさと里奈子に金を渡しに行って欲しい。
 いずれ生まれてくる大切な命のために、里奈子には・・・ほんまの意味で母親になる里奈子には、さっさと、こんな極悪非道な殺人鬼とは他人になってもらわんな困るんや。



 なんでやろうなぁ。
 今なら、はっきり、そう思うねん。




 いずれ里奈子の腹から生まれてくる大切な命には、ぼくのような人生だけは歩んで欲しくないって。
 


 だれのものでもなく、だれかのせいにするでもなく、自分のために、限られた命を全うして欲しいって。




 それから。




 ぼくは、ぼくのたったひとりの息子である康生を、心の底から愛してるって。
 康生がこの世に生まれてきた日からずっと、誰よりもかけがえのない存在やったって。
 康生が寝返りを打ったとき、康生が歩いたとき、康生が・・・
 康生の健やかな成長だけがぼくの唯一の喜びやったって。



 ぼくはあの日お母さんに殺されたけど、でも、殺されたから康生に出会えたんやでって。
 お母さんがぼくを殺したから、だから、同じように兄貴に殺された里奈子に出会って、幼いながらも、汚れてながらも、愛することが出来たんやでって。



 だからお母さんには、ぼくをこの世に生んでくれたことを、やっぱり感謝してるんやでって。

 生んでくれてありがとう、お母さん。
 育ててくれてありがとう、お母さん。
 
 苦労ばっかの人生やってんから、これからは自分のことだけ考えて生きてな、お母さん。



 そんなふうに。
 心の底から。
 思えるねん。



 要件はこれで終わり。

 長々書いてごめんな。
 お母さん、元気でな。
 からだだけは気をつけて。
 膝悪いねんから、くれぐれも無理すんなよ。


 字ぃが汚くてごめんな。
 里奈子のことだけ、頼んだで。
 絶対、頼んだで。


 さようなら、お元気で。 
 また来世、どこかで会えたら。





 中西 大輝









【終】
 
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