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The one …ただ一人の…
第10章 卒業式
「あっ、そうだ。」
曄良はそう言って、カバンを開けて何かを探している。そして、シックな包みを日向に渡した。

「卒業のお祝い。何か記念になる物を贈りたくて。」
『オレに?』
「そうだよ?他に誰にあげるの?」
『嬉しい。』

開けていい?と聞いて、包みを開ける。

モンブランの万年筆だ。

『曄良、これ無理したんじゃ…』
モンブランの万年筆といえば高級で、平気で4、5万する。

「私、仕事馬鹿で遊んでないから貯金結構あるの。だからこんな時くらいカッコつけさせて!」

ぺろっと舌を見せて笑う。

『人のセリフ、取ったな?』
曄良は、ふふふっと笑う。

『あっ、しかもイニシャル彫ってある!』
日向は感動して、涙目になった。
『大事に、使う。ありがとう、曄良。』

「気に入ってくれて良かった。」
ホッとしたように微笑む。

「桜、もうすぐ咲きそうだね。」

窓の外の桜の木を見つめた。

『花見しような。』
「うん。」
『その前に。』
「ん?」

『親父に会って欲しいんだ。』

曄良が目を見開く。
「あっ、えっ、ああ…そっか。そうだよね。」

『大丈夫?』

「うっ、うん。緊張するなぁと」

『大丈夫だよ。』

大丈夫だよって、日向のお父さんって事は、山野辺グループの社長さんと言うと事で、ここに来て反対とかされたりしないのかな?
相応しくないとか、あーっマイナスの事しか浮かんで来ない。

『曄良、百面相してるけど、大丈夫?』

日向は曄良の固まった頬をツンツンと突きながら、親父に会った時の曄良のリアクションを想像し、笑いを堪えていた。
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