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The one …ただ一人の…
第14章 記憶
日向の母の病院を後にして、山下の運転で曄良と日向は都内へ向かっていた。

『曄良……すごいなぁ…。』
「ん?」
日向は曄良の手を握って言った。

『母さん…笑ってたな……。』

「そうだね…笑ってた…笑顔見れて良かったね。」

日向の肩に頭を預ける。
『曄良のおかげだな……』

「私は何もしてないよ。ただ、隣に座って、お話ししてただけ。」
『そうなの?』
「庭の花の話とか、私の亡くなった母の話とか…」
「日向のお母さん、優しく抱きしめてくれるから、母の事思い出して、いっぱい泣いちゃった。」
『そうか……』

きっかけは、私の口からウッカリ出た名前……。

「多分。日向だよ。思い出すきっかけになったの。」

目を閉じて、思い出していた。

「結婚相手が日向だって分かった時に。記憶が戻って。」
『……でも…やっぱり、曄良のおかげだと思う。』
「そうかな?」
しばらく、車に揺られ、お互いの手のぬくもりを感じていた。
曄良は、他の人の心に、スッと入って来る感じがするんだ。そして、ゆっくり寄り添ってくれる。人柄なんだよなきっと。それが、母の氷で固められた心に届いた。
日向はそんな気がしてならなかった。

『曄良…ありがとう。』
そう言って、曄良にそっと優しくキスをした。
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