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The one …ただ一人の…
第16章 男のプライドと…
曄良を「ライル」の前で降ろすと店から慌ててマスターが出てきた。

「お兄ちゃん、ただいま。」
『曄良、暫く日向の所に身を隠せっ!』
「どうしたの?」

曄良が不思議そうに首を傾げる。
山下は、ドアに手を掛けたまま固まっている。

『アイツが、帰って来た。』
「アイツ?」

すると、不意に店の扉が開いた。

『曄良ぁ!迎えに来たよ〜!』
そう言うと、その男は曄良を抱き上げ、頬にキスをした。

バタンっ!

車のドアが思いっきり開いて、日向が凄い形相で歩いて来る。
男の肩を掴んだ。

『曄良はオレの婚約者だ!今すぐ離せっ!』
『私もですよ。小学生の時から。』

曄良は目を見開いた。

「もしかして、渉くん?」
『そう!思い出した?』
「すごく大きくなったね。背も伸びて…あ…の。降ろしてもらって良い?」

日向の顔が怖い。

「OK!」

曄良が解放されると、日向は曄良の腕を取り、抱きしめた。
『何なんだ。アイツ?』
「小学校の時の幼馴染みたいな。」
『結婚の約束したのか?』
「え?いや…だって……小学生の時の冗談みたいな感じの告白だし。」
『アイツは、冗談じゃないみたいだけど。』


小学5年生の夏休みが終わる頃、渉はアメリカへ引越す事が決まって、焦っていた。
幼馴染の曄良に告白してなかったからだ。
曄良は、小さい頃から可愛らしく、そのくせ正義感が強く、男女問わず人気があった。
渉は、いじめられっ子で、よく曄良に助けてもらっていた。
そんな曄良が大好きだった。
アメリカに立つ前日、近所の夏祭りに2人で出かけた。
曄良は浴衣を着ていて、ますます可愛かった。
初めて手を繋いだ。
渉はすごくドキドキした。
かけがえのない時間があっと言う間に過ぎていった。
帰り道、曄良に言った。
「僕、夏休み終わったら、アメリカに引っ越すんだ。」
曄良は歩く足を止め、渉を見た。
『お母さんに聞いたよ。お父さんの仕事で、一緒に行くって…』
「曄良は寂しくないの?」
『え?』
そう言うと、渉に抱きつかれた。
曄良はビックリした。
「僕、曄良の事が好きだ!」
『渉くん?』
「今は弱っちくて、曄良に守られてばっかりだけど、絶対にカッコよくなって、迎えに来るから!」
『え?』
「大きくなったら、僕と結婚して!」
曄良はビックリして、声も出なかった。
それだけ言うと、渉は走って行ってしまった。
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