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The one …ただ一人の…
第23章 The one
「マーマー見て?」
曄良は走ってくる小さい女の子の側にしゃがみ込んだ。
『あら、美味しそうなお団子ね、杏樹、上手に出来たね。』
その小さな女の子は、泥だらけになって作ったお団子を手に乗っけている。
曄良はありがとと言って、受け取る。
「あんずー!」
後ろから、小学生になった朔弥と優弥が走ってくる。
「あんず、危ないよ、そんなに走ったら。」
優弥があんずの手を取る。
「はーい。」
優弥は少し頬を染め、愛おしそうに見つめる。
もう片方の手を朔弥が取ると、
「あんず、行こ?」
と声をかける。
杏樹は背を向け、楽しそうに走っていく。
『メロメロね。うちの子達。』
結城さんの言葉に、曄良はクスクス笑った。

今日は結城さんの家に遊びに来て、そのあと子供達を連れて、近くの公園に来ていた。
『そういえば、曄良ちゃんの結婚式の時さ、手伝い嫌がってたうちの子達に日向さん説得に来たじゃない?』
「ああ、あの日?どうして説得出来たか、結局教えてもらえなかった。」
結城さんが、ニヤニヤして言った。
『旦那が聞き出した。』
「えっ?わかったの?」

『日向さん、オレたちの子供と結婚させてやるって言ったらしい。』
お前らが大人になったら、曄良は今のお母さんよりも年上だぞ。きっと曄良と自分の子供なら可愛いから、って。
「呆れた……」

『うちの子達も単純よね〜。でも、2人とも、今や杏樹ちゃんにメロメロだし。』

曄良は出産の時を思い出していた。
日向は生まれた杏樹を初めて抱いた時、
「曄良!ありがとう。本当にありがとう。」
と言って、しばらく杏樹を見つめた後に
「あんな約束するんじゃなかった。可愛いすぎる。」
と呟いた。曄良には何のことかさっぱりわからなかったが、今思えば、その事だったのだ。

「後悔してたんだ。あの時。」
『えっ?』
「杏樹が生まれた時に、あんな約束するんじゃなかったって言ったの。」
結城さんは大笑いした。
『もう、遅いわね。うちの子達、一途だから。』
曄良もクスクス笑った。

朔弥も優弥も、杏樹と良く遊んでくれる。
本当に目に入れても痛くないぐらいに溺愛してくれる。
曄良はその事が嬉しかった。
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