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The one …ただ一人の…
第23章 The one
『杏樹ちゃん、可愛いもん。日向さんもメロメロでしよ?』
「日向というよりは、山下さんがメロメロね。日向は思ったより、杏樹に執着ない感じなの。」
日向は結構子育てに厳しい。
その分山下が目一杯甘やかすから、杏樹は山下に懐いている。ま、日向に懐かない訳ではないからいいのだが。
「日向は、飴とムチって感じね。」
と言うと結城さんも意外な顔をした。
『へぇー、あの日向さんがね。』
不意に曄良の携帯がなった。公衆電話?
「もしもし?」
『あ、曄良?今どこ?』
「結城さんの家に遊びに来ていて、目の前の公園で遊んでる。」
『わかった。今から行くから待ってて。』
「えっ、あれ6時の便だったよね?」
『1本早めた。だからもう日本だよ。
とにかく、すぐ行くから。』
そこまで言うと、電話は切れた。
『日向さん?』
結城さんが聞いた。
「うん。もう成田に着いたって。」
日向は一週間前からアメリカへ出張していた。
散々一緒に行こうと言われたが、まだ小さい杏樹が、飛行機何時間も我慢できないからと、日向の母にも反対されて、渋々一人で行ったのだ。
「なんかすごく慌ててたけど、何かあったのかな?」
『そうなの?』
30分位すると、見た事のある黒い車が停まった。

日向が、走ってくる。

『曄良!』
「日向、どうしたのそんなに慌てて。」

次の瞬間、曄良は抱きしめられる。
『ぁぁ…曄良だ……』
「ちょっと。人前だから」
『結城さん、悪い。目瞑ってて。』

そう言うと、日向は曄良に唇を重ねた。
余裕なく、唇の間に舌を入れると曄良の舌を絡めていく。
ゆっくり、ゆっくりと味わう。
お互いの唾液が混ざり合い、糸を引きながらゆっくりと離した。
「日向……お帰り。」
『ただいま。』
またキスをする。

「パーパー」
杏樹が走ってくる。
『おう、杏樹、泥だらけだな。ただいま。』
そう言うと、曄良を抱きしめたまま、杏樹の頭を撫でた。
『パパ、今、充電中だから、後でな?』
「はーい!」
そう言うと、朔弥と優弥の所に走って行く。

『曄良、オレ海外出張はお前が一緒じゃないと行かない事にしたから。』
「えっ?」
そう言うと、また曄良の唇を奪う。
そんな私達を呆れた様に、結城さんが見上げていた。

「なんか、わかった。日向さんが杏樹ちゃんにメロメロにならない訳。」

不意に言われて、曄良が結城さんに視線を向けた。
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