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The one …ただ一人の…
第5章 好きという事
今日は担当したクライアントさんの結婚式。
ホテルでは仕事モードの曄良がテキパキと指示を出しながら動き回っている。
そんな姿を遠くから微笑みながら見つめているおじさんがいた。
曄良がふと目をやると、おじさんは手を挙げて挨拶をする。

「斎藤さん!おはようございます。」
ニッコリ笑う曄良に、ニコニコして答える。

「今日は曄良ちゃんが担当かい?」
『そうなんですよ。』
笑顔で返す。
斎藤さんはこのホテルのお掃除をしているおじさんで、曄良を見かけるといつも声を掛けてくれる。

「じゃあ、今日の新郎新婦さんは幸せだねぇ。曄良ちゃん一生懸命サポートしてくれるから」
とニッコリ笑う。

「えーっ、私だけの力じゃないので、スタッフみんなの力ですよ。」

『またぁ、そんな謙遜して』

「謙遜なんて、本当の事です。あっ、終わったら会場の掃除も手伝いますから、よろしくお願いします。」

『crownさんは何時もきめ細やかだよね。後片付けまで協力してくれる業者さんは中々ないよ。こんな掃除のおじさんにまで、いつも声を掛けてくれるし。』

そんな会話を交わしていると、会場の奥から曄良を呼ぶ声がした。
じゃあ、と挨拶をして駆け出していく曄良。

「本当に可愛いですね。早瀬さん。」
いつの間にか隣にいた同僚の桜井がニヤニヤしながら見つめていた。

「惚れるなよ。」
「斎藤さんこそ。」
斎藤さんは言葉を続けた。

「曄良ちゃんは彼氏が出来たからなぁ。」

桜井はえっと顔を輝かせた。
じゃあ上手く行ったんですね。良かった。
そんな会話をして、微笑む二人の言葉の意味を知るのは、まだちょっと先の話しになる。
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