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歪んだ三重奏 ~ドS兄弟に翻弄されル~
第28章 奪回

“ ジンさんは立派な人だな ”
彼についてミレイが知り得たことは、この一言に尽きるのだ。
多くの人から頼りにされて、部下からも慕われている。
彼を「お父さん」とまだ呼べないミレイに、無理をする必要はないとも言ってくれた。
…誠実な人だと思う。
“ でも…── ”
「お嬢さま、どちらへ行かれるのですか」
「……っ」
飲み終わったグラスを置いて再び歩き出したミレイを、護衛のひとりが呼び止めた。
ミレイは足を止め、数秒の間を置いて振り返って答える。
「ちょっと…外に」
「どちらへ?」
「あの、お手洗いに」
「では途中まで同行させていただきます」
「いいですっ、ひとりで行けます」
「お嬢さまにもしもの事があれば大変ですから」
ミレイは嫌がったが、男は首を縦に振らない。
“ ああ…、やっぱり ”
彼女は無意識に眉をひそめた。
これは今日に限ったことではない。
ジンの命令でミレイを守る彼等は、彼女を危険な目に合わせてはならないと…片時も目を離さない。
…過剰だと感じる。
異常だとも思う。
ミレイにはどうしても受け入れ難かった。

