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歪んだ三重奏 ~ドS兄弟に翻弄されル~
第30章 欠けた愛を 抱きしめて

「…ハァっ、……ぅ…ッ」
「──…」
彼の目に飛び込んできたのは、仰け反っていた頭をもとに戻した──ミレイの、泣き顔。
声すら満足に出せない彼女の唇は
瞬きをするたびに目尻から押し出される涙で、しっとりと濡れていた。
カルロが腰をつかってやると、悶えるミレイはくしゃりと顔を崩して
ますます溢れた彼女の涙が頬をつたい落ちる。
........
綺麗な涙だった。
それはカルロが二度と流すことのない物。
想いを殺し、全てに心を閉ざして…何にも動じないよう生きてきた中で封印した物。
9年前
母を失い、自身の手で愛する猫を殺したあの日の少年が、笑いながら流した涙──
それを、最後に。
「──…ハァ…」
カルロは彼女の涙に、指で愛おしそうに触れる。
懐かしい感触、痛みを映す温度。
自分が失った感情…。
欠けてしまったモノを、触れた指先に感じた。

