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星の島で恋をした【完結】
第21章 《二十一》

カティヤ王女とリクハルドはセルマが口を開くのを待ったようだったが、俯いたのを見て、カティヤ王女は我慢がならなかったようだ。
「ああ、もうっ!」
と半ば叫ぶように言うと、馬車が動いているのにも関わらず、座席から立ち上がった。
焦ったのはセルマだ。
カティヤ王女に座るようにとお願いするために同じように立とうとしたのだが、リクハルドに腰をがっつりと掴まれていたため、立つことは叶わなかった。
「リクハルドっ、離して!」
「嫌だ」
「いいから離して!」
「それは無理な相談だ」
セルマは解放してもらえないことが分かり、強行突破をすることにした。身体をひねってリクハルドの腕の中で向きを変え、座席に膝を掛けて、肩に手を置いた。
セルマはリクハルドの顔を上からじっと見た。
リクハルドの金色の瞳はセルマを愛おしそうに見つめていて、セルマは戸惑った。
しばらくの間、そうして見つめ合っていたのだが……。
「……こほん」
という遠慮がちな声にふたりははっとした。
「仲がいいのはいいけれど、わたくしのこと、忘れないでくださる?」
カティヤ王女の一言にリクハルドは舌打ちして、セルマは真っ赤になって慌てて視線を逸らした。
セルマは取り繕うようにリクハルドの腕の中で暴れながら口を開いた。
「カッ、カティヤ王女、危ないですから座ってください」
「セルマが横に来てくれたら素直に座るわ」
カティヤ王女の小さなわがままに、セルマは顔を引き締め、上からリクハルドをにらみつけた。それでもリクハルドの腕は緩まない。
「リクハルドっ」
セルマはリクハルドの名を呼んだが、それでも腕は緩まなかった。
「リクハルド、離して」
「やだ」
「離しなさい」
強い口調のセルマにリクハルドは渋々とようやく腕を緩めてくれた。
「セルマ、約束してくれるか」
「……なに?」
「戻ってくるのは俺の腕の中って」
「っ!」
「そうしないとカティヤの横には座らせない」
そう言ったリクハルドの腕は震えていて、セルマは小さくうなずいた。
「ああ、もうっ!」
と半ば叫ぶように言うと、馬車が動いているのにも関わらず、座席から立ち上がった。
焦ったのはセルマだ。
カティヤ王女に座るようにとお願いするために同じように立とうとしたのだが、リクハルドに腰をがっつりと掴まれていたため、立つことは叶わなかった。
「リクハルドっ、離して!」
「嫌だ」
「いいから離して!」
「それは無理な相談だ」
セルマは解放してもらえないことが分かり、強行突破をすることにした。身体をひねってリクハルドの腕の中で向きを変え、座席に膝を掛けて、肩に手を置いた。
セルマはリクハルドの顔を上からじっと見た。
リクハルドの金色の瞳はセルマを愛おしそうに見つめていて、セルマは戸惑った。
しばらくの間、そうして見つめ合っていたのだが……。
「……こほん」
という遠慮がちな声にふたりははっとした。
「仲がいいのはいいけれど、わたくしのこと、忘れないでくださる?」
カティヤ王女の一言にリクハルドは舌打ちして、セルマは真っ赤になって慌てて視線を逸らした。
セルマは取り繕うようにリクハルドの腕の中で暴れながら口を開いた。
「カッ、カティヤ王女、危ないですから座ってください」
「セルマが横に来てくれたら素直に座るわ」
カティヤ王女の小さなわがままに、セルマは顔を引き締め、上からリクハルドをにらみつけた。それでもリクハルドの腕は緩まない。
「リクハルドっ」
セルマはリクハルドの名を呼んだが、それでも腕は緩まなかった。
「リクハルド、離して」
「やだ」
「離しなさい」
強い口調のセルマにリクハルドは渋々とようやく腕を緩めてくれた。
「セルマ、約束してくれるか」
「……なに?」
「戻ってくるのは俺の腕の中って」
「っ!」
「そうしないとカティヤの横には座らせない」
そう言ったリクハルドの腕は震えていて、セルマは小さくうなずいた。

