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星の島で恋をした【完結】
第23章 《二十三》
そう口に出すと、セルマは自分があまりにも滑稽で、泣けてきた。それと同時に自分が惨めで、笑えてきた。
だけどここで泣いたって仕方がないと気がつき、鼻の奥がつんとするのを我慢しようとしたけれど、それは一歩遅くて、セルマの瞳から涙があふれた。
涙が一粒こぼれてしまえば、それが呼び水となり、涙が後から後からあふれて来た。それに先ほどもみっともなく嗚咽を洩らして泣いたのもあり、涙脆くなっていた。
突然泣き出したセルマに焦るのはリクハルドだ。
「セルマ?」
「……ごめ……ん、な、さい」
「な、どうして謝る? どこか痛いのか? あの男になにかされたっ?」
リクハルドのおろおろした声にセルマは首を振ったけれど、そうするとますます悲しくなって、涙が止まらない。
今まで、男の人に優しくされたことがなかった。
初めて優しくされて、勘違いしてしまった。リクハルドの優しさは一族の使命だったと知り、悲しくなった。
だけど、リクハルドがセルマに優しい理由を知っても、嫌いになれなかった。好きで愛おしいという気持ちは変わらなかったけれど、リクハルドから使命以上の気持ちはもらえないと分かった。
カティヤ王女から護衛の任は解かれてしまったけれど、セルマは騎士団を退団していない。
セルマの帰る場所はリクハルドの腕の中ではなく、カティヤ王女の側でもなく、まだ籍が残っているはずの騎士団だ。
「もう二度とリクハルドに会えないと思ったから、また会えて嬉しかった。……泣き止んだら、帰るから。それまでもう少し、腕の中にいさせてね」
だけどここで泣いたって仕方がないと気がつき、鼻の奥がつんとするのを我慢しようとしたけれど、それは一歩遅くて、セルマの瞳から涙があふれた。
涙が一粒こぼれてしまえば、それが呼び水となり、涙が後から後からあふれて来た。それに先ほどもみっともなく嗚咽を洩らして泣いたのもあり、涙脆くなっていた。
突然泣き出したセルマに焦るのはリクハルドだ。
「セルマ?」
「……ごめ……ん、な、さい」
「な、どうして謝る? どこか痛いのか? あの男になにかされたっ?」
リクハルドのおろおろした声にセルマは首を振ったけれど、そうするとますます悲しくなって、涙が止まらない。
今まで、男の人に優しくされたことがなかった。
初めて優しくされて、勘違いしてしまった。リクハルドの優しさは一族の使命だったと知り、悲しくなった。
だけど、リクハルドがセルマに優しい理由を知っても、嫌いになれなかった。好きで愛おしいという気持ちは変わらなかったけれど、リクハルドから使命以上の気持ちはもらえないと分かった。
カティヤ王女から護衛の任は解かれてしまったけれど、セルマは騎士団を退団していない。
セルマの帰る場所はリクハルドの腕の中ではなく、カティヤ王女の側でもなく、まだ籍が残っているはずの騎士団だ。
「もう二度とリクハルドに会えないと思ったから、また会えて嬉しかった。……泣き止んだら、帰るから。それまでもう少し、腕の中にいさせてね」