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星の島で恋をした【完結】
第4章 《四》
 カティヤ王女は強引に、だけどかなり言いにくそうに、休暇を取って星の島に行って肩の傷を治してくるようにと言ってきた。あのとき、カティヤ王女にしては珍しく歯切れの悪い言い方であったのは、セルマが受けた矢が呪いの矢だと知っていたからではないだろうか。肩の傷を治してくるようにというのは方便で、呪いを遠ざけただけだったのでは?



 カティヤ王女が強引にセルマに星の島に行くように言った理由が呪いの矢にあったのなら、セルマはここで大人しく自分の身が滅ぶのを待てばいいのだろうか。

 カティヤ王女を疑うわけではないが、そんな考えが浮かんできて、太陽の下にいながらまたもや背筋が寒くなった。



 ──カティヤ王女は珍しくセルマに強い調子で星の島に行くことをすすめたが、それと同時にこの島について様々なことを把握していた。言いよどんでいたのは呪いの矢のことではなく、この島にいる男のことについてだったのだが、セルマはそのことに思い至らなかった。

 しかもこの時点でカティヤ王女もあれが呪いの矢だったのには気がついていなかったのだから、それを理由にセルマを星の島へ行くようにとは言えなかった事情も、セルマは知らない。



 セルマがカティヤ王女の代わりに受けた呪いの矢。呪いの内容はどんなものなのだろうか。

 これが矢を受けた者だけに影響のあるたぐいならいいのだが、周りを巻き込むものだったら?



 もしもそうであれば、ここにいれば、あの男にも迷惑をかけることになるのかもしれない。嫌な男ではあるが、だからといってこの呪いに巻き込んでいい理由にはならない。

 しかも周りを巻き込む呪いだった場合、星たちの唯一の安息の場を穢してしまう。



 そう思うとセルマはいても立ってもいられなくなり、ここから出ようと海へと走り寄った。

 目の前に広がるのは恐ろしいほど透明な海。

 セルマは躊躇したが、星たちに迷惑をかけられない。

 だから海へと足を踏み出しそうとしたのだが。

「どこに行こうとしている」

 後ろから冷たい声を掛けられ、セルマの足は止まった。
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