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星の島で恋をした【完結】
第5章 《五》
 男の話した内容はひどかったが、それよりもセルマは聞き慣れない単語にひっかかり、首を傾げた。

 それを見て男はふっと表情を緩めた。ずっと険しい顔をしていた男の、それは笑みとも取れる表情。

 セルマはそれを見て、なぜかどきんと心臓が跳ねた。

「スキアは降りてきた星を喰う」
「星を喰べる……?」
「あぁ。最期を迎えるために空から降りてきた星を見境なく喰らう。そんなことをすれば、空の均衡が崩れる。だからどうにかしたいんだが、俺ひとりの力では、そんな大食漢を入り江から出てこられないようにするのが精一杯だ。あれを倒してほしい」

 男の願いにセルマは戸惑った。

 セルマはカティヤ王女の護衛だ。護衛をしているところに魔物に襲われたのなら退けることくらいはできるだろうが、そもそもが門外漢だ。それに、本格的に魔物の討伐があったとしても、専属の人たちがいるので関わることはなかった。

 しかし、今はそう言っていられる状況ではないのは分かったのだが。

「倒すって、どうやって?」

 セルマの疑問に、男は今度こそはっきりと笑った。どうして笑ったのか分からなかったが、華やかな笑みにセルマの頭にかーっと血が上った。

「……どうして赤くなっている」
「なっ、なんでもないっ」

 男の指摘にセルマはさらに赤くなったが顔を逸らした。赤くなったのを誤魔化すためにセルマは口を開いた。

「倒すにも私は武器を持っていない」
「ふむ」

 男はしばし悩んだが、なにかを思い出したようだ。セルマに視線を定めた。

「星に助けてもらえばいい」
「……星に?」
「おまえならば星からの助けを求めることができる」

 波打ち際に立っているセルマの側まで男が近寄ってきて手を伸ばしてきた。セルマは差し出された男の手を見た。

 思った以上に節の目立つ男らしい手。

 セルマに向けられた手のひらには見覚えのある握りだこがあった。思いがけないものを見つけ、セルマは男の手のひらを見つめ、それから顔を見た。

「どうした?」
「剣が使えるの……?」

 セルマの質問に、男はうなずいた。

「ここは暇だからな」

 暇だから剣を握っていたということなのだろうか。

「それなら、その剣でいい」
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