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星の島で恋をした【完結】
第5章 《五》
 濡れた下穿きのままで寝台に腰掛けるのがためらわれたので、再びガゼボの縁に座った。しばらくこうやっておけば、風が乾かしてくれるだろう。

 日陰に座っているとふわりと透明な風がセルマを撫でていく。透明な風に吹かれる度に先ほどではないにしろ、やはり不安になっていく。



 男はスキアという凶暴な獣を倒して欲しいと言ってきた。それがどんな形でどんな姿をしていて、どんな特徴があり、どんな弱点があるのかセルマにはさっぱり分からない。ましてや、セルマの腕で倒せるのか分からなかったし、一人でやり遂げられることなのかも分からない。

 左肩を負傷してからこちら、セルマは剣を握っていなかった。ずいぶんと長い間、訓練をしていなかったから身体も感覚も鈍っているような気がする。
 セルマはそっと左肩を回してみた。

 少し引きつれた感じはあるが、あれほどあった痛みがなかった。これならば大丈夫だと判断して、セルマはガゼボの中を見回して剣の代わりになりそうなものを探したが、どうみても寝台と小さな卓しかなかった。

 剣がなければないなりにやれることはある。

 セルマは鈍った身体の感覚を取り戻すために無理のない範囲で身体を動かすことにした。

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