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星の島で恋をした【完結】
第7章 《七》
*
太陽が海の向こうに沈んでいく。
まるで海の中へ潜っていくかのような太陽を、セルマはじっと見つめていた。
太陽が沈んだ後に残るのは、橙色と紫色と紺色と黒の残照。色が付いているはずなのに、この島にいるとその光さえ透明になっていくような錯覚に陥る。
その反面、夕方になって風が凪いだせいで周りの空気がどんよりと澱んできたことに息苦しさを覚えた。透明で怖いと思ったのは、島を渡る風のせいで、ここは星たちの墓場というだけあり、風が止まってしまうと急に沈み込んだ気配を漂わせることになった。しかも日が暮れてくるから、よけいに寂寥感が強くなる。
そんな中、セルマはガゼボの端に座って、世界に一人取り残されたかのような気持ちを抱きながら、息を詰めて太陽が沈んで夜になっていく様子を眺めていた。
セルマは結局、血に濡れて赤黒く染まったシャツを羽織りなおした。新しいシャツを出して着てもよかったのだが、肩の傷は完全には塞がっていないようなので、また血で汚したくなかった。
それから男が持ってきてくれた食べ物を口にした。それは予想していたものより美味しくて、セルマは自分が思っていたよりもお腹が空いていたようで、夢中になって食べた。
お腹がそれなりに満たされると、少し気持ちが落ち着いた。
とはいえ、どうすればいいのか分からなくて、膝を抱えてぼんやりとしていることしか出来なかった。
太陽の姿が徐々に見えなくなり、光の名残も少しずつ薄くなってくる頃、島に変化が現れ始めた。
最初は沈んだ太陽の光がまだ見えているからだと思ったのだが、どうにもおかしい。なんだろうと目を凝らしていると、昼間はあんなに黒かった陸地が白く輝き始めたのだ。
「うわぁ」
その白は周りを包み込むような優しさがあり、輝いていて美しかった。その光にセルマは思わず歓声を上げた。
「きれいだろう」
いつの間に現れたのか、気配なく近寄ってきた男にセルマは安堵を覚えると同時に、またなにかされるのではないかと警戒して身構えた。男はセルマの態度に気がついていないはずはないのに、淡々と続けた。
「これからもっと美しい光景を見ることが出来る」
太陽が海の向こうに沈んでいく。
まるで海の中へ潜っていくかのような太陽を、セルマはじっと見つめていた。
太陽が沈んだ後に残るのは、橙色と紫色と紺色と黒の残照。色が付いているはずなのに、この島にいるとその光さえ透明になっていくような錯覚に陥る。
その反面、夕方になって風が凪いだせいで周りの空気がどんよりと澱んできたことに息苦しさを覚えた。透明で怖いと思ったのは、島を渡る風のせいで、ここは星たちの墓場というだけあり、風が止まってしまうと急に沈み込んだ気配を漂わせることになった。しかも日が暮れてくるから、よけいに寂寥感が強くなる。
そんな中、セルマはガゼボの端に座って、世界に一人取り残されたかのような気持ちを抱きながら、息を詰めて太陽が沈んで夜になっていく様子を眺めていた。
セルマは結局、血に濡れて赤黒く染まったシャツを羽織りなおした。新しいシャツを出して着てもよかったのだが、肩の傷は完全には塞がっていないようなので、また血で汚したくなかった。
それから男が持ってきてくれた食べ物を口にした。それは予想していたものより美味しくて、セルマは自分が思っていたよりもお腹が空いていたようで、夢中になって食べた。
お腹がそれなりに満たされると、少し気持ちが落ち着いた。
とはいえ、どうすればいいのか分からなくて、膝を抱えてぼんやりとしていることしか出来なかった。
太陽の姿が徐々に見えなくなり、光の名残も少しずつ薄くなってくる頃、島に変化が現れ始めた。
最初は沈んだ太陽の光がまだ見えているからだと思ったのだが、どうにもおかしい。なんだろうと目を凝らしていると、昼間はあんなに黒かった陸地が白く輝き始めたのだ。
「うわぁ」
その白は周りを包み込むような優しさがあり、輝いていて美しかった。その光にセルマは思わず歓声を上げた。
「きれいだろう」
いつの間に現れたのか、気配なく近寄ってきた男にセルマは安堵を覚えると同時に、またなにかされるのではないかと警戒して身構えた。男はセルマの態度に気がついていないはずはないのに、淡々と続けた。
「これからもっと美しい光景を見ることが出来る」