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星の島で恋をした【完結】
第12章 《十二》
     *

 食べ終わったあと、男は食器を片付けてくるとセルマの側から離れた。ようやく一人になることができてぼんやりしていたのに、男はすぐに戻ってセルマの隣に座ると腕を引っ張って引き寄せてきた。

「なにをするのよっ!」
「好きな人と触れ合いたい」
「なにを馬鹿なことをっ」

 率直な言葉を添えられ、しかも甘く輝く金色の瞳でのぞき込まれ、セルマは真っ赤になった。

 真っ直ぐに見つめてくる金色の瞳はなにもかも見透かしてくるようで、恥ずかしくて仕方がない。しかもセルマのことを本当に愛おしそうに見つめてくるものだから、余計に羞恥心をあおられる。

「顔が赤い」
「恥ずかしいことを言うからよ!」
「セルマ、好きだ」

 思いがけない真っ直ぐな好意に、セルマは驚き、目を見開いた。

 男はセルマの反応が嬉しかったのか、幸せそうな笑みを向けてきた。

 初対面のときの反応との落差が激しすぎて、セルマの感情がついていかない。

 だからセルマは思いっきり顔を背けて、口を開いた。

「……私はおまえのことが嫌いだ」
「嫌いということは、俺に対してなんらかの感情を持ってるってことだな」

 まさかの返しにセルマはさらに目を見開いた。

 普通ならば嫌いと言われたら落ち込むなりするはずなのに、どうしてこの男はこんなにも前向きになれるのだろうか。

 さっきから男はセルマが思いもしなかった反応ばかりだ。そのせいで心臓がばくばくと言い始めた。

 この男はセルマの心を乱しまくっていく。だから離れようとしたのに、ぎゅうっと抱きしめられた。

「セルマ」

 甘ったるい声で名前を呼ばれ、セルマは首を振った。

 そしてふと気がついた。

「……名前」

 そうなのだ。セルマは名乗っていないけれど男はいつの間にかセルマの名前を知っていた。カティヤ王女から聞いていたのかもしれない。しかし、セルマはカティヤ王女から管理人がいるとしか聞いてなくて、名前を知らない。

「リクハルドだ」

 前に名前を聞いたときには教えてくれなかったのに、今回はあっさりと名前を教えてくれた。ようやく男の名前を知り、セルマはなぜだかほっとした。
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