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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
 その後は更に慎重に時間をかけて粥を食べさせた。その日は食べ終えるのに、ゆうに一刻余りを要した。それでも、すべてを父が食べ終えてホッとして、梨花は厨房で洗い物を終えた後、父の枕辺に戻った。
 ソギョンの口許に粥がついているのを見、微笑んで手ぬぐいで拭う。
 そのときだった。
 ソギョンの唇が僅かに動いたのだ。
「お父さん、どうしたの。何か言いたいことがあるのね」
 ソギョンは懸命に口を動かそうしている。唇が小刻みにひくつき、痙攣していた。
 そんな父を堪らない想いで見つめ、梨花はソギョンの口許に耳を寄せる。
「なあに、お父さん」
 しばらく耳を傾けていた梨花は、溜息をついた。何を言っているのか判らない。
 が、父から離れて、その口許の動きを再び見つめていた時、鋭く息を呑んだ。
―コ・ロ・シ・テ・ク・レ。
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