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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
井戸端に山茶花(さざんか)が今を盛りと花を付けている。濃いピンク色の花を幾つもたっぷりとつけ、鮮やかな緑の葉が花の色を更に際立たせるようだ。
数日前、兄と交わしたやり取りが梨花の耳奥でこだまする。
その日の朝、梨花は兄を振り切るようにして家を出てきた。あれほど強かった父の涙を見た日、梨花は外に出て働くことを決めた。
かねてから、口入れ屋に仕事先を紹介して貰えるように頼んでいたのだ。丁度その頃、さる商人の屋敷で女中を一人探していると言われ、そこに行ってみないかと勧められていた。
しかし、住み込みの仕事だというので、梨花はなかなか決断できないでいた。自分が家を出たら、昼間の父の世話は誰がするのか?
身動き一つままならぬ父をたった一人にして、家を出られるものではない。が、時ここに至って、躊躇はなくなった。
数日前、兄と交わしたやり取りが梨花の耳奥でこだまする。
その日の朝、梨花は兄を振り切るようにして家を出てきた。あれほど強かった父の涙を見た日、梨花は外に出て働くことを決めた。
かねてから、口入れ屋に仕事先を紹介して貰えるように頼んでいたのだ。丁度その頃、さる商人の屋敷で女中を一人探していると言われ、そこに行ってみないかと勧められていた。
しかし、住み込みの仕事だというので、梨花はなかなか決断できないでいた。自分が家を出たら、昼間の父の世話は誰がするのか?
身動き一つままならぬ父をたった一人にして、家を出られるものではない。が、時ここに至って、躊躇はなくなった。