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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
「―るさない。許さない」
梨花は血まみれのスンチョンの身体を抱き、男たちを睨みつけた。
雨は小降りになったものの、依然として止まない。男たちの持つ松明が暗闇を背景にゆらゆらと燐火のように不気味に揺れている。その狐火を彷彿とさせる焔は、さながらスンチョンの身体からさまよい出た魂のようにも思えた。
「私はお前たちを許さないわ」
「へっ、口の減らねえガキだ」
ミンスと呼ばれた男が肩を竦め、一方の小柄な男が吐き捨てるように言った。狐面を思わせる尖った面はいかにも酷薄そうな薄ら笑いが浮かんでいる。
「大口を叩いていられるのも今のうちさ。だが、お前は俺たちを恨むどころか、いずれは感謝するようになるだろうよ」
言い終わらない中に、梨花はいきなり大柄な男に担ぎ上げられた。
「何をするの。離しなさい、降ろしなさい」
梨花は叫び、懸命に手脚をばたつかせ暴れた。
このまま、こんな場所にスンチョンを置き去りにしては行けない。たとえ望みはないとしても、医者に診せなければ、もし儚くなったのだとしたら、弔いを出してやらなくては。
梨花はスンチョンから離れまいと、渾身の力で抵抗を試みる。
「煩せぇな。おい、黙らせろや」
狐面の男が言い、ミンスがそんざいに頷いた。
梨花は血まみれのスンチョンの身体を抱き、男たちを睨みつけた。
雨は小降りになったものの、依然として止まない。男たちの持つ松明が暗闇を背景にゆらゆらと燐火のように不気味に揺れている。その狐火を彷彿とさせる焔は、さながらスンチョンの身体からさまよい出た魂のようにも思えた。
「私はお前たちを許さないわ」
「へっ、口の減らねえガキだ」
ミンスと呼ばれた男が肩を竦め、一方の小柄な男が吐き捨てるように言った。狐面を思わせる尖った面はいかにも酷薄そうな薄ら笑いが浮かんでいる。
「大口を叩いていられるのも今のうちさ。だが、お前は俺たちを恨むどころか、いずれは感謝するようになるだろうよ」
言い終わらない中に、梨花はいきなり大柄な男に担ぎ上げられた。
「何をするの。離しなさい、降ろしなさい」
梨花は叫び、懸命に手脚をばたつかせ暴れた。
このまま、こんな場所にスンチョンを置き去りにしては行けない。たとえ望みはないとしても、医者に診せなければ、もし儚くなったのだとしたら、弔いを出してやらなくては。
梨花はスンチョンから離れまいと、渾身の力で抵抗を試みる。
「煩せぇな。おい、黙らせろや」
狐面の男が言い、ミンスがそんざいに頷いた。