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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
何しろ大きなお屋敷で、幾ら人手があっても足りないといわれるほどの規模だ。名前だけの下級両班などよりよほど両班らしい贅沢な暮らしをしており、梨花も初めて門をくぐったときは、あまりの屋敷の広さ、立派さに眼を疑ったほどであった。
兄のソルグクは直前まで、このお屋敷勤めには反対していた。
―いやなら、無理に行かなくても良いんだぞ。お前と親父の二人くらい、ちゃんと養える。お前は家にいれば良いんだ。今更、奉公になんぞ出ず、良い嫁ぎ先があれば、嫁にゆけ。親父のことなら気にせず、お前は幸せになれば良いんだ。
兄の言葉は嬉しかったけれど、かといって、その言葉どおりにできるものではなかった。
梨花は兄の辛そうな表情から眼を背け、後ろ髪を引かれる想いでこのお屋敷に来たのだ。
兄のソルグクは直前まで、このお屋敷勤めには反対していた。
―いやなら、無理に行かなくても良いんだぞ。お前と親父の二人くらい、ちゃんと養える。お前は家にいれば良いんだ。今更、奉公になんぞ出ず、良い嫁ぎ先があれば、嫁にゆけ。親父のことなら気にせず、お前は幸せになれば良いんだ。
兄の言葉は嬉しかったけれど、かといって、その言葉どおりにできるものではなかった。
梨花は兄の辛そうな表情から眼を背け、後ろ髪を引かれる想いでこのお屋敷に来たのだ。