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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
私を〝小花〟と呼んだひとは、たった一人。そう、今はもう生きているかどうかも判らない兄上さまだった。
―大きくなったら、私は兄上さまのお嫁さんになるの。
兄が大好きだった幼い梨花は、それが口癖だったのだ。
この方の手の温もりも優しい仕種も、どうしてか兄上さまに頭を撫でられたときの記憶を呼び起こす。
遠い、遠い、無邪気で幸せだった頃の記憶。
「こんなことをして、余計に嫌われるかな?」
梨花が完全に泣き止んだ頃合いを見計らったように、男が笑いを含んだ声で言った。
「冗談にしても、悪ふざけが過ぎます」
梨花は男から身体を離し、目一杯頬を膨らませた。
「君は歓んだり怒ったり、泣いたり拗ねたり―、本当に忙しいというか、見ていて飽きないね。やはり、君のような娘は見たことがない」
―大きくなったら、私は兄上さまのお嫁さんになるの。
兄が大好きだった幼い梨花は、それが口癖だったのだ。
この方の手の温もりも優しい仕種も、どうしてか兄上さまに頭を撫でられたときの記憶を呼び起こす。
遠い、遠い、無邪気で幸せだった頃の記憶。
「こんなことをして、余計に嫌われるかな?」
梨花が完全に泣き止んだ頃合いを見計らったように、男が笑いを含んだ声で言った。
「冗談にしても、悪ふざけが過ぎます」
梨花は男から身体を離し、目一杯頬を膨らませた。
「君は歓んだり怒ったり、泣いたり拗ねたり―、本当に忙しいというか、見ていて飽きないね。やはり、君のような娘は見たことがない」