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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
「謝るのは、こちらの方だ。いきなり度の過ぎた戯れ言を口にしたのは私なのだから。いや、実をいえば、この屋敷の息子だなどと素姓を明かしてしまえば、そなたが私に対して隔たりを置いてしまって、今までのように対等に接してくれなくなるのではと案じられてね。それゆえ、言わずもがなのことを口にしてしまった。許してくれ」
「私の方こそ、失礼をお許し下さいませ、若さま」
怖いもの知らずの梨花でも、奉公先の若さまに向かってゆくほどの勇気はないし、それだけの分別はあった。
殊勝に言う梨花を見て、男―尹南斗が困惑げに眉根を寄せる。
「急に他人行儀にならないで欲しい。私は、そなたにそんな風になって欲しくないゆえ、なかなかこの家の倅だと言えなかったのだ。先刻も正直に打ち明けたではないか」
「でも、若さまに馴れ馴れしい口を利いては、女中頭さまに叱られます」
「私の方こそ、失礼をお許し下さいませ、若さま」
怖いもの知らずの梨花でも、奉公先の若さまに向かってゆくほどの勇気はないし、それだけの分別はあった。
殊勝に言う梨花を見て、男―尹南斗が困惑げに眉根を寄せる。
「急に他人行儀にならないで欲しい。私は、そなたにそんな風になって欲しくないゆえ、なかなかこの家の倅だと言えなかったのだ。先刻も正直に打ち明けたではないか」
「でも、若さまに馴れ馴れしい口を利いては、女中頭さまに叱られます」