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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
梨花はともすれば身体が震えそうになるのを意思の力で抑制した。
梨花から数歩分離れた向こうに、男たちが焚き火を囲んで車座になっている。
ミンスと今一人、名前の判らない狐顔の小男、更にはもう一人の男が新たに一味に加わっていた。
その男は中肉中背、どちらかといえばごくありふれた容貌のこれといって特徴のない男だった。時ここに至り、梨花は自分の考えを改めざるを得なかった。
普通、悪党というものは、ミンスと狐男のように見るからに悪人といった風貌をしているものだ―と、これまで梨花は幼いなりに理解してきた。しかし、新たな男を見る限り、その考えは外れていたようだ。
漢(ハ )陽(ニヤン)の人混みに紛れてしまえば、すぐに見分けがつかなくなりそうなほど、印象の薄い男である。が、時折、油断ならぬ光を瞬かせる双眸は、やはり、常識と分別を備えた堅気の男には程遠い。
梨花から数歩分離れた向こうに、男たちが焚き火を囲んで車座になっている。
ミンスと今一人、名前の判らない狐顔の小男、更にはもう一人の男が新たに一味に加わっていた。
その男は中肉中背、どちらかといえばごくありふれた容貌のこれといって特徴のない男だった。時ここに至り、梨花は自分の考えを改めざるを得なかった。
普通、悪党というものは、ミンスと狐男のように見るからに悪人といった風貌をしているものだ―と、これまで梨花は幼いなりに理解してきた。しかし、新たな男を見る限り、その考えは外れていたようだ。
漢(ハ )陽(ニヤン)の人混みに紛れてしまえば、すぐに見分けがつかなくなりそうなほど、印象の薄い男である。が、時折、油断ならぬ光を瞬かせる双眸は、やはり、常識と分別を備えた堅気の男には程遠い。