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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
 梨花には、自分が居る場所がどこなのか皆目見当もつかなかった。というのも、ミンスに気絶させられた後、梨花は知らない間に屋敷の外に運び出されていたようだったからだ。
 梨花にしてみれば、これから我が身がどうなるかもむろん心配ではあったけれど、心にかかるのは庭に置き去りにしたスンチョンのことばかりであった。
 見たところ、既に雨は止んでいるようだ。時折流れる雲が途切れたときには、細い月すら見えた。雨は止んでいるにしても、あの状態で放置されているとすれば、既にスンチョンの生命に関しては絶望的だろう。もしやすぐに手当をしてやれば、助かったかもしれない。
 そう考えただけで、梨花は後悔と絶望に叫び出しそうになった。
 男たちは上機嫌で安酒を浴びるように飲んでいる。梨花の心など頓着するはずもなく、何かを喋っては時折、大声で笑っていた。
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