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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
梨花は訝しげに空を見る。先刻は慌てていたので判らなかったけれど、どうもこれは、雪ではなさそうだ。むろん、雨でもない。
ぱらぱらと白い粒が落ちてきているのを見ると、雹(ひよう)ではないか。
雪ならまだしも風流だが、雹に出くわすとは―。尹家に奉公してひと月、久しぶりに漢陽の町に出られたと思ったら、この体たらくである。
たとえ用事を言いつけられての外出とはいえ、そこは若い娘のこと、久方ぶりに眼にする市の賑わいや活気溢れる人々の様子を間近に見て、梨花の心は浮き浮きと弾んでいた。
しかし、折角の外出も、この悪天候のせいで、最悪だ。
梨花は思わず吐息を吐き出した。その時、物凄い轟音が轟き渡った。真っ黒な空に閃光が何度も光る。
「キャッ」
梨花は両手で頭を抱え込み、その場にうずくまった。
ぱらぱらと白い粒が落ちてきているのを見ると、雹(ひよう)ではないか。
雪ならまだしも風流だが、雹に出くわすとは―。尹家に奉公してひと月、久しぶりに漢陽の町に出られたと思ったら、この体たらくである。
たとえ用事を言いつけられての外出とはいえ、そこは若い娘のこと、久方ぶりに眼にする市の賑わいや活気溢れる人々の様子を間近に見て、梨花の心は浮き浮きと弾んでいた。
しかし、折角の外出も、この悪天候のせいで、最悪だ。
梨花は思わず吐息を吐き出した。その時、物凄い轟音が轟き渡った。真っ黒な空に閃光が何度も光る。
「キャッ」
梨花は両手で頭を抱え込み、その場にうずくまった。