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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
突如として、頬を冷たいものが掠めた。梨花はハッと空を仰ぐ。
そのときだった。いきなり閃光が鈍色の雲間でひらめき、ゴロゴロという怖ろしげな音が響いた。
―雷?
梅雨でもあるまいに、この季節には珍しい現象だ。しかし、気紛れな自然を相手にこういう文句や常識は全く通用しない。
とにかく急いで戻らなければ。
梨花は思い直し、立ち止まっている時間も惜しくて歩き出した。が、時は遅く、真っ暗な空から小さな白い粒がぱらぱらと落ちてきた。
梨花は小さく声を上げ、慌てて眼についた筆屋の軒先に飛び込んだ。この天候のせいか、店はきっちりと戸を閉めていて、中からは物音一つしない。無人なのではないかとすら、思ってしまいそうなほどの静けさだ。
梨花は自らを落ち着かせるように片手を胸に当て、改めて空を見上げた。
そのときだった。いきなり閃光が鈍色の雲間でひらめき、ゴロゴロという怖ろしげな音が響いた。
―雷?
梅雨でもあるまいに、この季節には珍しい現象だ。しかし、気紛れな自然を相手にこういう文句や常識は全く通用しない。
とにかく急いで戻らなければ。
梨花は思い直し、立ち止まっている時間も惜しくて歩き出した。が、時は遅く、真っ暗な空から小さな白い粒がぱらぱらと落ちてきた。
梨花は小さく声を上げ、慌てて眼についた筆屋の軒先に飛び込んだ。この天候のせいか、店はきっちりと戸を閉めていて、中からは物音一つしない。無人なのではないかとすら、思ってしまいそうなほどの静けさだ。
梨花は自らを落ち着かせるように片手を胸に当て、改めて空を見上げた。