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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第4章 求め合う心
二人は何も言わず、ただ降りしきる雨を見つめていた。
面妖なことに、黙りこくっていても、気まずさはなかった。こうして、いつまでもこの男の側にいられたら。
そんな想いが唐突に湧き上がってきて、梨花はその想いを振り払うように首を振る。
ふいに南斗が沈黙を破った。
「宗先生は、私の師匠でもあってね。実をいえば、今日も宗先生のお宅に貴重な書物を拝見しにお邪魔した帰りなのだ。宗先生は金子には全く興味を示さないが、書物には眼がなくてね。たいした蔵書家でいらっしゃる」
「若さまが蔵書家とおっしゃるからには、先生はさぞ珍しい書物をお持ちなのでしょうね」
実の兄から〝本の虫〟とまで呼ばれていた本好きの梨花である。宗俊秀の屋敷にたくさんの本があると聞いて、興味を引かれないはずがなかった。
面妖なことに、黙りこくっていても、気まずさはなかった。こうして、いつまでもこの男の側にいられたら。
そんな想いが唐突に湧き上がってきて、梨花はその想いを振り払うように首を振る。
ふいに南斗が沈黙を破った。
「宗先生は、私の師匠でもあってね。実をいえば、今日も宗先生のお宅に貴重な書物を拝見しにお邪魔した帰りなのだ。宗先生は金子には全く興味を示さないが、書物には眼がなくてね。たいした蔵書家でいらっしゃる」
「若さまが蔵書家とおっしゃるからには、先生はさぞ珍しい書物をお持ちなのでしょうね」
実の兄から〝本の虫〟とまで呼ばれていた本好きの梨花である。宗俊秀の屋敷にたくさんの本があると聞いて、興味を引かれないはずがなかった。