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第5章 凍れる月～生涯の想い人～

　たどたどしい字は間違いだらけで、文字の読み書きはあまりできない者が書いたと知れた。
　もっとも、女中の大半が読み書きのできない者が多いのは本当だ。家が貧しくて、学問をする金も時間もなく、親の方にしても、そんな時間があれば、子どもであっても働いて家計を支えて欲しいと願っている。
　尹家に奉公する女中たちにおいても、字は書けなくても何とか読めるというのは、まだマシな方なのだ。
　チョンハは、梨花と同様にこの屋敷に仕える若い女中だ。既に将来を言い交わした恋人もいて、その恋人は尹家に古くから仕える執事の次男である。
　そんなチョンハが突然、何を相談するというのかという疑念は萌したけれど、親しい女中仲間の中でも最も隔てのないチョンハの頼みとなれば、断れない。