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第5章 凍れる月～生涯の想い人～

「海棠、結婚しよう」
　いきなりのことを囁かれ、梨花は一瞬、恐怖も忘れて、呆れ果てた。
　この男は一体、何を言っているの？
「ちゃんとお前一人を守って、他の女には金輪際、手を出さねえ。大切にするから、今、ここで俺のものになってくれよう」
　ソヌの手が放れた一瞬の隙に、梨花は精一杯の力を込めて両手で男の逞しい身体を突き飛ばした。
「あなたは自分が何を言っているのか、判っているの？」
　実際、梨花はこの男の正気を疑っていた。
　ソヌの瞳には憑かれたような光が瞬いている。
「俺は狂ってもいない。ただ、お前に惚れているだけだ。なっ、海棠、俺の気持ちを判ってくれ。お前がお屋敷に来た日から、俺はお前しか眼に入らなくなったんだ。もう、お前なしでは生きてゆけねえんだ」