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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第5章 凍れる月~生涯の想い人~
「おはよう」
優しい声で返され、梨花は慌てて頭を下げる。
「おはようございます」
「気持ちの良い朝だな」
南斗が眩しげに眼を細めて庭を見つめる。
漢陽には明け方まで雪が降っていた。三日も降り続いた雪が漸く止み、庭にはかなりうずたかく積もっている。
南斗の部屋の前からは庭が一望できる。手前の松の樹に雪がうっすらと載り、冬でもなお色鮮やかな緑と純白の雪が眼に滲みるようだ。
真っすぐに差し込む朝陽が松の上の雪を照らし、雫になって溶け始めた雪が煌めいている。
梨花がこの屋敷に上がってから、はやみ月を数えていた。
新しい年になったばかりの今月早々、尹家は久々に静かな歓びに包まれていた。半年に渡って留守にしていた当主北斗がいよいよ一月末にも帰国すると報せが届いたのだ。
優しい声で返され、梨花は慌てて頭を下げる。
「おはようございます」
「気持ちの良い朝だな」
南斗が眩しげに眼を細めて庭を見つめる。
漢陽には明け方まで雪が降っていた。三日も降り続いた雪が漸く止み、庭にはかなりうずたかく積もっている。
南斗の部屋の前からは庭が一望できる。手前の松の樹に雪がうっすらと載り、冬でもなお色鮮やかな緑と純白の雪が眼に滲みるようだ。
真っすぐに差し込む朝陽が松の上の雪を照らし、雫になって溶け始めた雪が煌めいている。
梨花がこの屋敷に上がってから、はやみ月を数えていた。
新しい年になったばかりの今月早々、尹家は久々に静かな歓びに包まれていた。半年に渡って留守にしていた当主北斗がいよいよ一月末にも帰国すると報せが届いたのだ。