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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第5章 凍れる月~生涯の想い人~
梨花が頬を染めてうつむくと、南斗は表情を引きしめた。
「もう一度だけ、手を見せてごらん」
梨花は無言でかぶりを振った。
梨花だって、年頃の娘なのだ。好きな男にには、綺麗な手を見せたい。
その時、彼女は初めて我が身が両班のお嬢さまとして育っていたなら―と考えた。実の
両親さえ生命を落とさなければ、今頃は梨花も判(パン)書(ソ )、政丞(チヨンスン)の令嬢として暮らしていたはずだ。両班家の娘なら、こんな汚い醜い手をしてはいないだろう。
今の梨花の両手には苛酷な労働で荒れ、指には無数の霜焼け、ひび割れができている。自分が見ても、眉をひそめたくなる痛々しさだ。
「良いから、手を出して」
やや強い口調で言われ、仕方なく両手を差し出した。
南斗は梨花の手を自分の左手に乗せ、もう一方の手で愛おしむように撫でた。
「もう一度だけ、手を見せてごらん」
梨花は無言でかぶりを振った。
梨花だって、年頃の娘なのだ。好きな男にには、綺麗な手を見せたい。
その時、彼女は初めて我が身が両班のお嬢さまとして育っていたなら―と考えた。実の
両親さえ生命を落とさなければ、今頃は梨花も判(パン)書(ソ )、政丞(チヨンスン)の令嬢として暮らしていたはずだ。両班家の娘なら、こんな汚い醜い手をしてはいないだろう。
今の梨花の両手には苛酷な労働で荒れ、指には無数の霜焼け、ひび割れができている。自分が見ても、眉をひそめたくなる痛々しさだ。
「良いから、手を出して」
やや強い口調で言われ、仕方なく両手を差し出した。
南斗は梨花の手を自分の左手に乗せ、もう一方の手で愛おしむように撫でた。