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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第5章 凍れる月~生涯の想い人~
「若さま、今、何と―」
「先刻も言ったように、私は一日も早く、そなたを私のものにしたい。それに、いつまでも、こうして人眼を忍ぶのもいやなのだ。そなたに肩身の狭い想いをさせず、二人でいても、堂々としていたい」
幾つもの夜を集めたような黒瞳はどこまでも真摯だ。
梨花は南斗の漆黒の瞳から視線を逸らした。
「若さま、それは無理です」
「何故?」
梨花の顔を覗き込もうとする南斗から逃れるように、彼女は小さくいやいやをした。
「私を困らせないで下さい。私は尹家にお仕えする女中にすぎないのです。どんなに頑張っても、若さまの奥さまにはなれません」
「先刻も言ったように、私は一日も早く、そなたを私のものにしたい。それに、いつまでも、こうして人眼を忍ぶのもいやなのだ。そなたに肩身の狭い想いをさせず、二人でいても、堂々としていたい」
幾つもの夜を集めたような黒瞳はどこまでも真摯だ。
梨花は南斗の漆黒の瞳から視線を逸らした。
「若さま、それは無理です」
「何故?」
梨花の顔を覗き込もうとする南斗から逃れるように、彼女は小さくいやいやをした。
「私を困らせないで下さい。私は尹家にお仕えする女中にすぎないのです。どんなに頑張っても、若さまの奥さまにはなれません」