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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第6章 兄の心
「確かにお前は変わったよ。愉しそうっていうか、満ち足りてるていうか。何だか、家にいた頃よりも生き生きしてる。俺は端からお屋敷奉公には反対してたけど、そんなお前を見ていると、かえって行かせて良かったのかもなとも思う」
兄はしばらく梨花を見つめていたかと思うと、唐突に訊いてきた。
「よほどお屋敷での生活が性に合ってるんだろうな。辛いことはないか?」
「ううん、ちっとも。皆、良くしてくれるから、辛いことなんて何もないの」
今でも女中頭に頭ごなしに叱られたときは、物陰でひっそりと涙を流すことがある―、そんな余計な話をしても、かえって兄を心配させるだけだ。
だから、梨花は笑顔で何もないと言っただけだった。
「―何か良いことでもあったのか?」
ソルグクが上目遣いに見ている。勘の鋭い兄だから、梨花の身に何かが起こりつつあることを漠然と感じ取っているのだ。
兄はしばらく梨花を見つめていたかと思うと、唐突に訊いてきた。
「よほどお屋敷での生活が性に合ってるんだろうな。辛いことはないか?」
「ううん、ちっとも。皆、良くしてくれるから、辛いことなんて何もないの」
今でも女中頭に頭ごなしに叱られたときは、物陰でひっそりと涙を流すことがある―、そんな余計な話をしても、かえって兄を心配させるだけだ。
だから、梨花は笑顔で何もないと言っただけだった。
「―何か良いことでもあったのか?」
ソルグクが上目遣いに見ている。勘の鋭い兄だから、梨花の身に何かが起こりつつあることを漠然と感じ取っているのだ。