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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第6章 兄の心
梨花は兄を刺激しないよう、慎重に言葉を選びながら話してゆく。
三月前に町中で盗まれ巾着を取り戻してくれた男が、実は尹家の御曹子南斗であったこと、その事実は尹家に上がってから初めて知ったこと。
口を開きかけた兄に対して、梨花は機先を制した。
「判ってる。お兄ちゃんは、南斗さまと私では身分違いだから、結婚なんて無理だって言いたいんでしょう」
それに対して、ソルグクは暗い顔で黙り込んだまま、何も言わない。
狭い部屋の中に気まずい沈黙が漂った。
ややあって、ソルグクが低い声で言った。
「俺が言いたいのは、そんなことじゃない」
ソルグクは何事か言おうとして口をうごめかし、首を振った。唇を舐め、何から話そうかと思案するように眼を閉じたり開けたりを繰り返している。
三月前に町中で盗まれ巾着を取り戻してくれた男が、実は尹家の御曹子南斗であったこと、その事実は尹家に上がってから初めて知ったこと。
口を開きかけた兄に対して、梨花は機先を制した。
「判ってる。お兄ちゃんは、南斗さまと私では身分違いだから、結婚なんて無理だって言いたいんでしょう」
それに対して、ソルグクは暗い顔で黙り込んだまま、何も言わない。
狭い部屋の中に気まずい沈黙が漂った。
ややあって、ソルグクが低い声で言った。
「俺が言いたいのは、そんなことじゃない」
ソルグクは何事か言おうとして口をうごめかし、首を振った。唇を舐め、何から話そうかと思案するように眼を閉じたり開けたりを繰り返している。