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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第6章 兄の心
「帰って貰えませんか」
帰れと怒鳴りたかったが、仮にも妹の奉公先の坊ちゃんである。頭ごなしに怒鳴りつけるわけにもゆかず、努めて冷静にふるまっているつもりだった。
「親父は到底、他人に逢わせられるような状態じゃない」
「それは判っています。ですから、お父上の方はお見舞いだけ申し上げて、後でお兄さんとお話しさせて頂こうと考えてきました」
鷹揚に応える南斗に、ソルグクは素っ気なく言った。
「あんたと話すことは何もない」
「そういうわけにはゆかないのです。私は妹さん―海棠との結婚を許して頂くために来たのですから。今日は、海棠が初めての休みを取って帰っていると聞いたので、丁度二人でご挨拶する良い機会だと思って訪ねてきました。これは私と海棠にとっては、とても大切なことなのです」
帰れと怒鳴りたかったが、仮にも妹の奉公先の坊ちゃんである。頭ごなしに怒鳴りつけるわけにもゆかず、努めて冷静にふるまっているつもりだった。
「親父は到底、他人に逢わせられるような状態じゃない」
「それは判っています。ですから、お父上の方はお見舞いだけ申し上げて、後でお兄さんとお話しさせて頂こうと考えてきました」
鷹揚に応える南斗に、ソルグクは素っ気なく言った。
「あんたと話すことは何もない」
「そういうわけにはゆかないのです。私は妹さん―海棠との結婚を許して頂くために来たのですから。今日は、海棠が初めての休みを取って帰っていると聞いたので、丁度二人でご挨拶する良い機会だと思って訪ねてきました。これは私と海棠にとっては、とても大切なことなのです」