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第7章 哀しい現実

　そのことを知りながら、梨花の前で南斗をあからさまに侮辱したのは、我ながら大人げないふるまいだった。あの日は、梨花が三ヵ月ぶりに帰ってくるというので、代書屋の方も無理を言って丸一日休みを貰ったというのに。
　梨花が次にいつ休みを貰えるのかは知れず、そのいつになるか判らない休みまで悶々と悩み続けるのも癪だ。
　いっそのこと、お屋敷まで出向いて、梨花に逢って直接謝ろうかとまで考えている彼であった。
　梨花がお屋敷に戻ってから六日め、ソルグクは懐に薄紅色の髪飾り(リボン)を忍ばせ、家を出た
。
　髪飾りは端っこに小さく桜の刺繍が施されている。高価なものではないけれど、小間物屋の店先で偶然眼にした刹那、梨花の顔が浮かんで衝動的に買ってしまった。