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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第7章 哀しい現実
留守中、父の世話は隣の女房に任せているゆえ、心配はない。尹家の屋敷までは徒歩(かち)で往復一刻あれば十分だ。忙しい梨花と長話ができるとは最初から期待していないし、ただ顔を見て〝済まなかった〟とだけ言えば、それで良い。
家を出て歩き始めた時、小柄な男が前方から急ぎ足で歩いてくるのが見えた。
鼠色の粗末な衣服を着て、頭には布を巻いている。身なりからして、自分と似たような暮らしの男だろうと判った。
この近隣の家を訪ねてきたのだろうと何気なくやり過ごそうとしたまさにその時、男がついっと近寄ってきた。
「済みませんが、この界隈に崔雪國というお人が住んでいると聞いたのですが」
二十歳の若者としてはごく平均的な身長のソルグクと比べても、頭一つ分以上低い。年齢は定かではないが、頭にかなり白いものが混じっているところを見れば、五十は過ぎているのではないか。
家を出て歩き始めた時、小柄な男が前方から急ぎ足で歩いてくるのが見えた。
鼠色の粗末な衣服を着て、頭には布を巻いている。身なりからして、自分と似たような暮らしの男だろうと判った。
この近隣の家を訪ねてきたのだろうと何気なくやり過ごそうとしたまさにその時、男がついっと近寄ってきた。
「済みませんが、この界隈に崔雪國というお人が住んでいると聞いたのですが」
二十歳の若者としてはごく平均的な身長のソルグクと比べても、頭一つ分以上低い。年齢は定かではないが、頭にかなり白いものが混じっているところを見れば、五十は過ぎているのではないか。