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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第8章 終焉
    終焉

 男の癖に妙に甲高い声が先刻から癇に障ってならない。南斗は眼前のどっかりと座った男を醒めた眼で観察する。
 暦は一月から二月に入り、父北斗がはるばる長旅を終えて清国より帰国して数日が経っていた。
 猛威徳は北斗の敵といっても過言ではない。利を得るためには人殺しすら辞さない威徳のやり方を北斗は強く批判していた。
 商売は利を得て幾らの世界ゆえ、損をするようなことがあってはならないが、かといって、儲けのために何をしても良いということではない。商売の基本は信頼と真心であり、商売人は客との間に揺るぎない信頼関係を築くことが先決。利潤の何分の一かは消費者に還元するくらいの覚悟がなければならない。
 それが、北斗の商法である。
 漢陽を代表する商団のそれぞれの首領二人は、若い頃から犬猿の仲であった。
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