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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第8章 終焉
 しかし、父北斗の乗った船が港に着いたと知らせを受けたときには、既にいつもの彼らしい落ち着きと分別を取り戻していた。―少なくとも表面だけは。
 今日も南斗は父と共に猛威徳の待つこの翠月楼へとやって来た。
 威徳のぎょろっとした眼が南斗に向けられている。南斗が威徳を観察しているように、彼もまた南斗を品定めしているのは間違いない。偉大なる北斗商団の大行首の跡取りはどの程度の器量なのか見極めてやろうという魂胆は見え透いている。
「それにしても、尹どのが羨ましい限りですな」
 威徳がひときわ高い声を上げた。
「このようにご立派なご子息を持たれて、貴殿はお幸せですぞ」
 フン、心にもないお世辞なぞ、お前には似合わないぞ。
 思わず毒づいてやりたいのを堪え、南斗は淡く微笑った。
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