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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第8章 終焉
「それを聞いて、安心して旅に出られるよ」
「また帰ってくるんでしょ」
 訊ねずにはいられなかった。
 ソルグクは優しい笑みを浮かべ、頷いた。梨花がよく知る兄の顔だった。
「ああ、帰ってくるよ。お前が親父をたった一人の親父だと言い切ってくれたように、俺もいつかお前を妹だと言い切ることができるようになろうと思う。そうなった時、必ず帰ってくる」
 うん、うんと、梨花は幾度も頷いた。
「それじゃあ、行ってくる」
「―行ってらっしゃい。道中、気をつけてね」
 ソルグクが背を向ける。
 再びゆっくりと遠ざかってゆく背中に向かって、梨花はずっと手を振り続けた。
 ソルグクの背中が見えなくなった後、梨花は石橋の上にしゃがみ込んだ。
 橋の下を流れる川は今日も変わらない。
 きっと、十一年前も、この川の流れは今と変わらず、さらさらと流れていたのだろう。
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